事例インタビュー<第三回>

「事例インタビュー」は、気象データを実際に活用されている企業様等へのインタビュー記事です。

~防災分野での気象データ活用~ 行動につながる情報を提供する「D-Resilio®」

  • 株式会社NTTデータ 様
  • 株式会社ハレックス 様

D-Resilio連携基盤は迅速で的確な対応が必要とされる災害時に、行政や企業の効率的な防災情報収集を実現し、先回りした災害対応の検討・判断を支援するプラットフォームです。
防災業務に有用なコンテンツを提供しているさまざまな企業との連携により、今までにない基盤サービスを実現します。(※1)

※1 株式会社NTTデータ「D-Resilio 連携基盤」ページより引用
https://promotion.d-resilio.com/cp/promotion
(閲覧日:2024年1月19日)


データ利活用の事例インタビュー企画、今回は、株式会社NTTデータ第一公共事業本部 モビリティ&レジリエンス事業部の阿部 暁(あべ さとる) 課長と、株式会社ハレックス ビジネスソリューション事業部の馬目 常善 (まのめ つねよし)部長から、防災分野におけるデータ活用についてお話を伺いました。

NTTデータ 阿部暁様(左)とハレックス 馬目常善様(右)

●はじめに、各社の事業のご紹介をお願いします。

【株式会社NTTデータ 阿部暁様(以下、「NTTデータ 阿部様)】 
NTTデータの阿部と申します。
NTTデータは「情報技術で、新しい『しくみ』や『価値』を創造し、より豊かで調和のとれた社会の実現に貢献する」ことを企業理念として掲げています。この理念のもと、お客様と一緒になって、公共、金融、法人などの広い領域で、さまざまな課題をシステムのDX化等を通して解決しています。 私が所属しているモビリティ&レジリエンス事業部では、防災やレジリエンスを専門にしています。レジリエンスというのは「(災害などの)危機に対して弾力的に対応する性質」や「危機から回復する性質」を意味する言葉です。
災害が社会に与える影響の大きさを鑑み、社会における防災やレジリエンスの強化は、弊社の中でも特に大切な事業として位置付けています。

【株式会社ハレックス 馬目常善様(以下、「ハレックス 馬目様)】
ハレックスの馬目と申します。
ハレックスはNTTデータグループの一員で、唯一の気象情報提供会社です。気象庁から許可を受けて予報業務を実施するとともに、お客様のニーズを踏まえ気象情報や気象データの提供を行っています。主に四つの事業展開をしています。 
・一つ目は、API(※1)などを通して、お客様に必要な気象データを提供する事業です。
・二つ目は、ASP(※2)事業です。弊社が開発している、最新の気象情報をご覧いただくアプリや、特定の気象状況をアラートでお知らせするアプリなどを利用いただくものです。
・三つ目は、このASPの進化版とも言える、気象に関する専門システムの構築です。テレビ局の防災システムや鉄道会社の気象監視システムなど、お客様のニーズに基づくシステムの開発や運用を行っています。
・四つ目は、わが社の気象予報士による気象データ関連のアドバイザサービスです。
※1 API:Application Programming Interface の略。顧客企業のシステムに、ハレックスのシステムを接続し、気象情報等を提供するようなイメージ。
※2 ASP:Application Service Providerの略。気象データを使ったアプリケーションを顧客企業に利用いただくようなイメージ。

●ありがとうございます。次に、NTTデータのD-Resilioについて教えてください。

【NTTデータ 阿部様】
D-Resilioは、NTTデータの防災に関する知見を集約した「総合防災ブランド」です。簡単に言うと、「いろいろな組織が持つ防災に関する情報を一か所にまとめて、便利に活用するための基盤」となります。特徴として、次の三点に力を入れています。
一点目は、情報が「つながること」です。
防災には、多くの情報が不可欠です。被害や避難状況の情報、人口分布情報、SNS情報、そして気象情報と、活用できるデータは数多くあります。一方で、それらの情報はいろいろなところに散らばっていて、活用するためには、まず集めてくる必要があります。
こういった情報が「ひとつの基盤を通してつながる」ことで、活用の幅が広がります。D-Resilioには、専門知識・情報を持つハレックスさんをはじめとしたさまざまな企業等(下図参照)との連携により、多くの分野の情報が集まっています。

二点目は、情報を「つかうこと」です。
集約された情報は、Webページから手軽にご覧いただくことができます。
これまで自治体や企業の方がひとつひとつ集めて整理していた情報が、D-Resilioでは、地図やタイムラインなどのわかりやすい形式で自動的に集約されます。さらに、「河川が一定の水位に達した場合にアラートで通知する」など、集約される情報にルールを付けて処理することも可能です。
これにより、現場での情報収集の負荷を低減し、意思決定を効率的に行うことができます。

集約された情報の表示

設定した拠点ごとに状況監視

そして三点目は、情報を「いかすこと」です。
NTTデータには、分野や業界を横断してさまざまな問題解決を行ってきた経験があります。ここに、防災に携わる皆様の課題や悩み、そして専門的な知見や目的意識を共有いただき、一緒に工夫することで、最適な業務支援モデルを作り上げることができます。

この3点の強みを持つ「D-Resilio」のサービス名は、「災害(Disaster)に弾力的に対応できる、ハイレジリエント社会を実現するためのプラットフォームになれば」という想いからつけたものです。 より多くの情報と「つながり」、より多くの情報を「つかい」、また情報を「いかす」ことで、災害の予防から初動対応、復旧復興対応までさまざまな場面で、D-Resilioを活用いただければと思います。

●多くの情報を集約し活用する、まさに「NTTデータの総合防災ブランド」ですね。
この事業を始めるきっかけは何だったのでしょうか。

【NTTデータ 阿部様】
NTTデータは、1995年の阪神淡路大震災をきっかけに、防災領域でのサービスを開始しました。
自治体や省庁、企業などの防災活動を支援し、現場の声を聴いていく中で、
情報というのは、最終的には「その情報を見たことで何かの活動につながる」ようにならないと意味がない、と考えるようになりました。 こうした思いから、情報を集めるところから使うところまで一貫してサポートできるような、新しいプラットフォームを作ることを目指しました。

●「情報を見たことで何かの活動につながる」というところについて、詳しく教えてください。

【NTTデータ 阿部様】
例えば情報が10個あったとして、ユーザの目標は、それら10個の情報を知ることではありません。10個の情報を見て「何をするべき状況なのか」ということを知りたいのです。
ですから、ユーザの負担を軽減するためには、情報を単純に並べればいいのではなくて、行動に繋がるような情報を提供することが大切になります。

避難指示の発表を例に挙げてみましょう。
大雨の状況から避難指示を出したが、交通事故で主要な道路が通行止めになってしまった、という状況を想像します。避難指示を出しているのに、住民が避難できない状況になってしまったわけですから、新たな対応が必要になってきますよね。
このような事例を想像すると、個別の情報だけではなくて、それぞれの情報に関連する周辺の情報を紐づけて確認できることが大切だということがわかります。この例では、「避難すべき状況か」に「避難できる状況か」という情報が組み合わさる形ですね。

あらゆる事態が発生し得る災害現場では、必要となる情報を丁寧に整理し、それを適切な形で提供していくことで、情報が活動につながるものだと考えています。

●たしかに、情報は、情報そのものに価値があるのではなくて、活動につながるから価値があるのですね。
ところで、「防災のサービス」と聞くと、自治体向けが中心になるのではという印象がありますが、企業においてはどういった情報の使い方があるのでしょうか。

【NTTデータ 阿部様】
企業の場合は、従業員の安全の確保と、営業の継続の二つが入り口になるかと思います。店舗の営業を継続すべきなのか、職員を帰宅させるべきなのか、そもそも出社させるべきなのか、などの判断が課題となります。
さらに一歩踏み込むと、営業所を一時避難所として開放するなど、「企業として災害対応に貢献する」ような考え方もあります。インフラ企業などでは、指定公共機関として行政と連携をしているところもありますね。

●なるほど、企業の防災活動をサービス提供により支援することで、社会全体にもメリットがあるということですね。
続いて、D-Resilioの中で気象会社が担っている役割を、ハレックス様に伺います。どのようなことされているのか、教えていただけますでしょうか。

【ハレックス 馬目様】
一番大切な役割は、ハレックスのサービスを通して、D-Resilioへ気象データを提供することですね。
まずは弊社のサービスについて説明したいと思います。

弊社では気象データに詳しくない方にも使いやすい形で気象データを提供するAPIをサービスしています。
例えば、気象庁の天気予報を見て「私の地域は、晴れマークの部分なのか、曇りマークの部分なのか、どっちに入っているんだろう」と思ったことはありませんか?
実は天気予報は一次細分区域という単位で発表されていて、それぞれのマークがカバーする地域は厳密に決まっているのですが、自分の住んでいるところがどの一次細分に属しているのかなんて、知らない方も多いですよね。こういった例は他にもあって、例えば「風の予想を知りたい場合にはどんな情報を見ればいいの?」と聞かれても、答えられない人がほとんどでしょう。
このような気象データに関する詳細な仕様を把握されていない方々にも広くご活用頂くために使いやすい形で気象データを提供するサービスを行っています。

また、昨今のGIS普及に伴って、気象データを地図上に表示したい。といったニーズが増えています。
こういったお客様のご要望に応え、GIS向けに速やかに、扱いやすい形で気象情報を提供するサービスが、HalexSmart!です。

このHalexSmart!を介して、さまざまな形での利用が想定されるD-Resilioに、使いやすい気象データを提供する。これがD-Resilio事業に対するわが社の役割となります。

【NTTデータ 阿部様】
ハレックスさんにご協力いただいている点は、気象データの提供に関する部分だけではありません。
「複雑な気象データをいかにわかりやすく伝えるか」というノウハウをアドバイスいただけることも、とても頼りになっています。
D-Resilioでは、交通データや人流データ、SNSのデータなど、さまざまなデータを利用していますが、これらの多くは最近活用が進んできたデータで、わかりやすく伝える工夫はまだまだこれからです。一方で、気象データは歴史が長く、見せ方に工夫が重ねられているため、その表現はわかりやすく、進んでいると感じています。
地図上にただ重ねればいいのか、それとも別の表現手段もあるのかなど、さまざまなデータの表現をご相談しています。

【ハレックス 馬目様】
嬉しいコメントですね。
災害時には時間の猶予が短いので、パッと見て状況を理解できるよう、情報をうまく組み合わせたり、新しい情報へと統合したりするなど、情報を少ない数へと収斂させていくような考え方が大切になると思っています。それには、情報の性質をしっかり押さえておくことが大切です。
気象データには長い歴史がありますし、今もなお、気象庁は新しい技術で新しいプロダクトを出してくれています。これは気象データの専門性がますます強くなるということでもありますので、気象会社として、日々研鑽を重ねていく必要がありますね。

●NTTデータとハレックスは、どれくらいの頻度で、どういった内容を相談されているのでしょうか。

【ハレックス 馬目様】
意見交換は、毎朝やっていますよね。

【NTTデータ 阿部様】
そうですね、毎日行っています。営業などで自治体とお話をするときも、まず話題に挙がるのは気象データの話ですし、日々の気象状況の解説的な側面も含めて、ハレックスさんとは毎日様々な点についてお話をしています。 例えば、「気象データと他のデータとを合わせて表示する際の表現の工夫」がその一つです。交通量の変化と気象状況との関連性をうまく表現できないか、SNS投稿の位置情報からその現場の気象情報へスムーズにアクセスできないか、など、アイデアベースで、いろいろなテーマをざっくばらんに相談しています。

●データを取り込んで表示する仕組みが完成したら終わりというわけではなくて、日々検討を重ねていっているのですね。

【NTTデータ 阿部様】
そのとおりです。ここではハレックスさんなどの協力企業の知見や、お客様からの「現場の声」がとても重要となります。表現の模索に終わりはなく、日々検討を重ねています。

●ありがとうございます。
最後に、お二人に、ひとつずつ質問させてください。
まず、馬目様。これからの社会における、気象データの役割について、どのようにお考えでしょうか。

【ハレックス 馬目様】
先ほど阿部さんからあったように、やはり情報は、行動の判断につながらなければ意味がないですよね。
気象の情報は特にそういう側面が強くて、「10ミリの雨が降ります」とだけ言っても、「10ミリの雨ってどんなんだっけ。折りたたみの傘でいいんだっけ。そういえば風は吹くんだっけ。レインコートにした方がいいんだっけ・・・」と、そういった判断ができないと、意味のない情報になってしまいます。情報をきちんと翻訳したり、気象以外のデータと掛け合わせたりして、より判断しやすい情報にしていくことが、今後どんどん必要になってくるのだと思います。

我々は、気象データしか扱っていない、専門会社です。
だけど気象は、暮らしや産業、生活全体に関わるものです。だから、相手が持っているノウハウや、長年の経験などの情報を、気象データと掛け合わせることができると思っています。 そこでは、気象情報は裏方として沢山使われていて、実は知らない間に広く広く皆さんに使われていたんだというような世界を目指せればいいなと思っています。

●最後に阿部様、D-Resilioのこれからのビジョンと、そのサービスを通して目指す社会について教えてください。

【NTTデータ 阿部様】
私も、馬目さんの目指す未来に大賛成です。
そして、そのようにデータが裏方として役に立っている姿のひとつとして、D-Resilioがあるのだと考えています。気象データをハレックスさんに担っていただいているように、色々な企業、組織の皆さまが集めてきた情報や知見と、我々の情報やノウハウも混ぜ合わせて、それでよりうまく社会が機能する。こういった未来を目指しています。

いろいろな方から気軽にサービスについてご相談いただけるとありがたいと考えています。


最後まで読んでいただきありがとうございました。
本記事が、みなさまの気象ビジネスの発展等につながりますと幸いです。

以下リンクより、D-Resilioや株式会社ハレックスへのお問い合わせが可能です。
また、コンテンツそのものについてのお問い合わせや、インタビュー掲載のご希望等ございましたら、WXBC事務局までお知らせください。